債権回収
PRACTICES当事務所は債権回収を得意としています
当事務所は債権回収を得意としています。
債権回収のご依頼を受けた場合、内容証明を出したうえで相手方と交渉し、やむを得ない場合には訴訟を起こすなどするのが弁護士の一般的な手法です。
当事務所においては、これらの手法だけにとどまらず、独自のノウハウをもとに相手方の状況を十分理解した上で、真に実効性のある債権回収を行っています。
また、そもそも「債権回収」の手法を用いる必要が生じないよう、取引前に相手方について調査すべき事項、取引時に取り交わす契約内容のチェック、保証人の確保、物的担保の取得、取引後の相手方の動向・担保物の管理把握方法、相手方破綻後の回収妨害行為に対する法的対応などについても様々なノウハウを持っています。
債権回収の実例
商品の転売先に対する売掛債権の差押え
- 債権者:計測機械部品の販売会社(A社)
- 債務者:計測機械を組み立て販売する会社(B社)
- 第三債務者:B社から製品を購入した会社(C社)
- 状況:債権者A社は計測機械部品の販売によって約600万円の売掛債権を有していました。債務者B社は債権者A社から購入した計測機械部品に若干の加工をして、第三者C社へ約800万円で販売しました。どちらの債権も未回収であるうちに、B社からA社に対して「債権者集会の開催のお知らせ」と題する書面とともに、B社が債務の弁済をすることができなくなり事業を廃止する旨の通知があったため、A社から相談を受けることになりました。
- 証拠資料の収集
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相談内容は、まず、この債権者集会にどう対応すればよいかというものでした。そこで、債権者集会ではB社の資産・負債の状況が説明されることになりますが、それに加えて、転売先であるC社との取引について、発注書や納品書、検収書の写し、B社の製品カタログなどを入手するようアドバイスしました。
- 債権者代位権の行使
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次に、C社からB社に弁済がなされてしまうと、B社には差し押さえる可能性のある財産がなくなってしまいます。そこで、迅速にC社の支払いを止める必要がありました。このようなときに利用できるのが、民法423条に基づく債権者代位権です。債権者代位権は、債務者が無資力になったときに、債務者が有する権利を債権者が代わって行使することができる権利です。債権者代位権は、裁判所の判決などが必要なく、第三債務者から金銭を取り立てることが可能であるため、迅速に行使することができます。この事例では、B社から債務の弁済ができなくなった旨の通知があり、B社は無資力と考えられますので、債権者代位権の行使が可能となります。債権者代位権は債権者の債権額の範囲内で行使することができますので、A社が有する債権額である600万円をA社に支払うようC社に請求することができます。
C社の立場では、A社とB社との間で何らかの紛争が起きたことが認識できますので、A社に対して素直に払ってこずに支払い自体を止めてしまうことがありますが、それでもB社に対する支払いを止める効果が期待できます。
- 動産売買先取特権の行使
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動産を売った際の売掛債権には先取特権が発生し(民法311条5号)、その動産の転売によって債務者が受ける金銭債権(転売代金債権)を、その支払いがなされる前に差し押さえて支払いを求めることができます(物上代位権。民法304条1項)。②で述べた債権者代位権の行使により、一時的にC社の支払いをストップすることができていますので、この間に、裁判所に動産売買先取特権に基づく転売代金債権の差し押さえの申立てをすることになります。
このときに、①で入手した発注書や納品書、検収書などを証拠資料として裁判所に提出することになります。動産売買先取特権は、法律上は、抵当権や質権と同じような担保権とされていますが、その存在を証明する文書が必要となり(民事執行法193条1項)、通常の取引過程で債務者が関与して作成された文書で立証することが必要で事後的に作成された報告書などの文書では足りないと理解されています。
通常の取引では、得意先へ売却した後に、その得意先がいつ、どこへ、いくらで転売したかといった書類を入手することはないのではないでしょうか。この事例では、債権者集会へ出席し、その機会において適切に必要な書類を入手できたため、動産売買先取特権の行使が可能となりました。
また、動産売買先取特権では、転売代金債権への差し押さえはできますが、この事例では、B社がA社から購入した部品に加工を加えて売却していますので、単純な転売ではなく、請負代金債権ではないかという点も問題となります。転売代金債権と同視できなければ、動産売買先取特権が発生しないと理解されているためです。この点は、B社がC社に対して有する債権(800万円)のうちの相当割合をA社がB社に対して有する債権(600万円)が占めていることからB社の加工が寄与する割合が低いと考えられることや、B社がC社に対して販売した製品の形状などから、B社のC社に対する債権は転売代金債権と同様のものと裁判所から判断されました。動産売買先取特権の行使は、担保権の行使であるため、通常の民事裁判手続と異なり、債権者の提出した証拠により動産売買先取特権の存在が証明されたと判断されれば、債務者の言い分を聞くことなく、差押命令が発出され、迅速な回収が可能となります。
最後に、支払が一般的にできない状態に陥った債務者から取立てをすることは、後に破産手続き等の法的手続が開始された後に、破産管財人等からその支払いを否認されるリスクが生じます(破産について破産法162条1項1号など)が、動産売買先取特権は、破産手続外で行使することができる別除権とされていますので、正当に弁済を受領することができます。
このように、債権回収は、局面によっては、民法、民事執行法、破産法などの複数の法律にまたがる検討が不可欠になり、その中でベストな選択肢をとる必要があります。今回の事例では、債権者集会の開催の連絡がA社に届いた時点で即座に相談を受けることができたため、債権者集会でどのような証拠書類を収集すべきかという点について適切に対応することができました。これらの書類がなければ、いくら抽象的には権利が生じているとしても実際の債権回収には結びつきません。突発事態が生じた場合は、すぐに専門家に相談し、適時適切な対応をとるようにされてください。