- 企業法務一般、顧問契約
第三者の取締役会への出席の可否
Q
ある役員OBから「取締役会に出席して意見を述べたい」という申入れを受けています。このような申入れは断ってもいいものでしょうか。そもそも,取締役会に,取締役,監査役以外の者が出席して発言したり,意見を述べたりすることは許されるのでしょうか。
A
会社法は,取締役会の決議を取締役の多数決によって決めるべきことを定めており,取締役以外の者が決議そのものに加わることは認められません(会社法369条1項)。しかし,決議そのものには参加しないということであれば,会社法には,取締役会の会議の場にいられる者を制限するような明文のルールはありません。
したがって,この点を明確に判示した裁判例などは見当たらないところではありますが,取締役会の構成員たる取締役の総意による限りは,取締役でない者を会議に参加させることは特段制限されないものと考えられます。
実際,担当従業員や執行役員などが参加して議案に関する説明をしたり,外部のオブザーバーが意見を述べたりするということは多くの会社において行われており,このような運用には基本的に問題はないものと思います。
ただし,取締役会の主体はあくまで各取締役であり,上記のような運用は取締役会の決議にとって必要・有益だという各取締役の共通の了解のもとで行われているものであると考えられます。
この点について,部外者の参加の可否は取締役会決議事項であるとする見解もあるところですので,少なくとも,取締役の過半数の納得が得られていないような場合には,第三者の取締役会への参加を認めるべきでないでしょう。無用な外部者の参加によって取締役会の意思決定がゆがめられ,決議の結果が変わってしまうようなことがあれば,取締役会決議の効力に問題を生じるおそれもないわけではないと考えられます。
御社のケースの場合には,取締役のみなさまのお考えとしてはできれば取締役会に当該役員OBの方を参加させたくないというご意向なのだと思いますので,申入れをお断りすることに問題はないものと考えます。
なお,もし取締役でない第三者を取締役会に参加させる場合には,参加すること自体に法的な問題はなかったとしても,会議で取り扱われる情報の内容によって,守秘義務との関係での問題や,インサイダー取引規制との関係での問題などを生じる可能性もありますので,このような点についてはくれぐれもご留意ください。
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