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減給を伴う人事異動

Q

ある職場の部長が,従業員のやる気をそぐような言動を繰り返しており,職場の雰囲気が悪くなっているとの相談がありました。
調査したところ,パワハラとまでは言えないものの,複数の従業員から部長の不適切な言動の指摘があり,従業員の中には,部長との関係に悩み,精神科を受診した者もいました。
部長に聴き取りを行ったところ,部長は不適切な言動を認めたものの,言動を改善する気が見られません。
このままだと,心身の不調による離脱者が出るなど,職場の業務運営に支障を来しかねないので部長を別の職場に配置換えしようと考えています。なお,部長の職能資格は変更しません。
配置換え先は部長職ではないので役職を解くことになり,部長職の役職手当がなくなって実質的な減給となってしまいますが,このような配置換えは問題ありませんか?
それとも,懲戒処分としての減給の手続きを取る必要があるのでしょうか?

A

1 実質的に減給となるからと言って,必ずしも懲戒処分の手続きを取る必要はありません。
人事権の行使として裁量的判断により役職を解くことは,就業規則に根拠規定がなくとも可能です。
もっとも,相当な理由がなく,役職を解かれることで賃金が相当程度下がるなど本人の不利益が大きい場合には,人事権の濫用となる可能性があります。
また,配置転換については,就業規則等に配置換えの権限が明示されている必要があります。
そのうえで,配置転換命令が濫用とされないためには,配置転換命令の業務上の必要性,当該従業員を対象者とすることの合理性と,当該命令がもたらす職業上・生活上の不利益が不釣り合いでないことが必要です。

2 本件では,複数の従業員から部長の不適切な言動の指摘があり,部長自身も不適切な言動をしたことを認めています。
また,本来であれば職場で範を示すべき部長の不適切な言動は職場環境への悪影響が大きいこと,実際に職場環境に悪影響を及ぼしていること,部長が言動を改善する気がないことなどを踏まえると,役職を解くことについての相当な理由や,配置転換についての業務上の必要性及び対象者選択の合理性も認められる可能性が高いと考えます。
降職の理由や配置転換の必要性との兼ね合いではありますが,部長職の役職手当がなくなることの不利益が過大でなければ,人事権の行使として役職を解き,配置転換命令で別の職場に異動させることは問題ないと考えます。

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