当ウェブサイトでは、サイト利用状況を把握するためにCookieを使用しています(Google Analytics、BowNow)。オプトアウト方法などの詳細は個人情報保護方針およびBowNowプライバシーポリシーをご参照ください。 当ウェブサイトの使用を続行するとCookieに同意したことになります

企業法務Q&A例 CORPORATE LEGAL Q&A
  1. TOP
  2. 企業法務Q&A例
  3. 株主総会招集通知後の総会会場の変更の可否について
  • 企業法務一般、顧問契約

株主総会招集通知後の総会会場の変更の可否について

Q

当社は上場会社ですが,株主総会の招集通知発送後,開催予定のホテルが突然倒産して閉鎖し,場所を当社会議室に変えることにいたしました。
(問1)開催場所を変えることはできますか。
(問2)場所を変えた際の手続きはどうなりますか。改めて招集通知を作成発送する必要がありますか。
(問3)実務上の留意点は何ですか。

A

1(問1)について
株主総会の招集通知の発送後に総会の開催場所を変えることはできます。
【理由】
(1)変更の可否
会社法上,株主総会の開催場所は取締役会が決定して招集通知に記載し,法定期限(上場会社の場合,2週間前)までにその招集通知を発送する必要があります。
取締役会で定めた開催場所(等の会社法298条1項所定の事項)を変更しようとする場合の要件や手続についての規定はありませんが,一度決定した開催場所でそのまま実行することが事実上不能になった場合等にまで開催場所を変更することが法律上禁じられていると解することは困難と思われます。
(2)変更の方法
変更の決定は,そもそも開催場所の決定権限が取締役会にあることからすると取締役会決議で行うことが原則と考えられます。
もっとも,そのような時間的余裕が無い場合に代表取締役が,取締役会決議の執行行為の一環として代表取締役のみによる決定により変更を行うことも,全く許されないわけではないと解され,実際にその旨判示した裁判例(※)もあります。ご質問の場合についても,取締役会決議による変更のほか,そのような時間的余裕がない場合でも,当初の取締役会決議で運営方法を変更する可能性が予定されていたような場合においては代表取締役の決定により,開催場所を貴社会議室に変更することは可能と考えられます。

(※)いったん定めた開催場所が新型コロナウィルスの影響で使用できなくなり開催場所と時間を変更した事例(大阪地裁令和2年4月22日決定)において,「定時総会招集決議を執行すべき代表取締役の権限の範囲は,当該定時株主総会招集決定の合理的解釈によって画定される」とした上で,「当該定時株主総会招集通知には,新型コロナウィルス感染症への対応として「本定時株主総会運営に変更が生じた場合には,以下のウェブサイトに掲載いたしますので,ご出席の際にはご確認ください。」という一文が明記され,URLが記載されている」という事情から「本件定時株主総会は新型コロナウィルス感染症の動向いかんによっては定時株主総会の運営に変更があり得ることを前提としていたことが明らかであり,変更をおよそ許容しないという趣旨と解することはできない」旨判示し,代表取締役による変更の違法性を否定しています。

2(問2)について
改めて招集通知を作成発送する時間的余裕がある場合には,招集通知を作成発送することが適切です。ただし,そのような時間的余裕がない場合においては,プレスリリース及びホームページへの掲載で開催場所を変更した旨を通知するという方法が考えられます
【理由】
株主総会の開催にあたっては,株主に対して,株主総会の開催場所が記載されている招集通知を発しなければなりません(会社法299条1項及び4項)。そうしますと,変更後の開催場所が記載された株主総会の招集通知を改めて作成発送するのが原則となります。
他方で,改めて招集通知を作成発送する時間的余裕がない場合もあろうかと思います。この場合については,改めて招集通知を作成することは不可能ですので,プレスリリース及びホームページに開催場所の変更を掲載することにより,周知させる必要があります。

3(問3)について
株主への周知,当日間違ってホテルへ来た方への対応等が必要です。
【理由】
株主総会の招集手続や決議方法に法令違反がある場合や著しく不公正であることは,株主総会決議の取消事由とされています。設問の事例ではいったん株主総会の開催場所をホテルと周知していることから,当日,会場(本社)ではなく誤ってホテルに行ってしまう株主が発生し,株主総会に出席できないという事態が生じてしまうかもしれません。これにより,株主総会決議取消事由である「招集手続や決議方法の法令違反・著しい不公正があった」との指摘を受ける恐れも無いとは言えません。
したがって,出来る限り株主の株主総会への出席を可能とする手段を尽くすことが,株主総会決議を争われないようにするために望ましく,具体的には次のような対策が考えられます。
ア インターネット等による事前の周知
株主への郵送の通知が不可能である場合,まずはプレスリリースを行い,ホームページの目立つ位置に開催場所変更のお知らせを掲載することが必要と考えられます。また,株主へ日頃からニュースレターなどをメール配信している場合は,メールで開催場所変更を通知することも良い手段でしょう。
イ ホテル(当初予定会場)への掲示・誘導
当日,誤ってホテルに到着してしまった株主のため,以下の内容をホテルの見えやすい位置に掲示することも一案と考えます。
①会場変更の事実
②変更後の場所と時刻
③変更後の会場への移動方法(バス,タクシーの手配が必要)
 対応が可能である場合,会場へ向かうシャトルバスを手配しておくことも考えられます。また,徒歩で向かえる距離であれば会場への誘導員の配置も有効です。
ウ 開催場所の選定について
設問の事例では本社を会場としていますが,変更後の開催場所の選定に当たっては,①キャパシティ,②近接性の2点を考慮すべきです。
変更後の会場の収容人数が当初の予定会場,予想来場人数より極端に少ない場合,そのこと自体が冒頭に述べた取消事由に該当する恐れがありますので,注意が必要です。
また,既に招集通知を送付している場合,株主総会に出席するための交通機関・宿泊施設を手配済みの株主がいることが想定されます。当初の開催場所から遠い位置に変更することは,このような株主の株主総会への出席を事実上妨げることとなり望ましくありません。
当日誤って到着した株主の移動ということを考えても,近隣の会場を確保することが望ましいでしょう。

【Web相談即時予約】について

当事務所があらかじめ設定したご予約カレンダーの日時と、ご相談者様(企業のお客様に限ります)のご都合が合う場合には、お申し込みと同時に当該日時での Web 相談予約を完了していただけます。
紛争やトラブルのご相談だけでなく、法務に関する一般的なご質問への対応も可能ですので、ぜひお気軽にご予約ください。

※ご予約カレンダーに表示されない日時にWeb相談をご希望の場合は、
お問合せフォームからお申し込みください。

WEB相談即時予約 こちらをクリック