- 企業法務一般、顧問契約
定款変更の必要性について
Q
当社では,保有するテナントビルで各携帯事業者がそれぞれ個別に整備していたネットワーク設備(ケーブル,アンテナなど)を,当社が設置・共用化して各事業者に使用させるというインフラシェアリング事業に参入することを目指しています。
当該事業は直接的には電気通信事業に当たると思われますが,当社の定款ではその目的に「電気通信事業」の定めはありません。電気通信事業の届け出は済ませていますが,所管庁である総務省からは電気通信事業の登録届出手続き上は,定款に「電気通信事業」を定めることは要件ではないと示されていますし,もともとの不動産事業に関連する事業であるため不要なのではないかとの見解もあるようです。
このような中,定款変更が必要なのかどうかお尋ねしたいです。
A
そもそも定款変更が必要となるか否かは,民法34条が「法人は,法令の規定に従い,定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において,権利を有し,義務を負う。」と定めていることから,行おうとしている事業がこの目的の範囲内か否かから判断されることとなります。
まず,この目的の範囲内であるにもかかわらず定款変更しなかった場合には次の2パターンの問題が想定できます。
一つは,会社が行った行為が後から目的の範囲外であるとして無効であると(会社側から)主張された場合です。そのため,契約の相手方からしてみると,後から無効を主張されるリスクがあることから,定款を確認して契約を進めてよいか確認するという意味合いがあります。
他方,もう一つの場面としては,内部的な意味で,資金の使い道が目的の範囲内か否かで争いになることも考えられます。一般の株式会社であれば,株主等の利害関係者から指摘を受ける可能性があります。その場合,取締役会や業務執行者の活動を制限する役割を果たすこともある(違反すると役員が責任追及されることとなる。)ことから,会社としては,目的の範囲内か否かは気にしておく必要があります。
いずれにしても,コンプライアンス上,会社が行う(法律)行為が目的の範囲内であるかどうかが問題となることから,行おうとしている事業がすでに記載のある目的の範囲内か否かについて検討します。
「目的の範囲」とは,判例上「外形から見て定款所定の目的である業務を遂行するのに必要となりうる行為」をいい,目的達成に必要かどうかはもっぱら行為の客観的抽象的性質から決定すべきであるとしています。
判例的には定款所定の目的の範囲を広く解しており,実務上も広く記載するため,近年においてある行為が会社の目的の範囲外とされる実例はあまりありません。
会社のなす行為は原則目的の範囲内であるという判例の整理をしている文献もあるほか,兼営事業について関連性が薄いものであっても目的の範囲内とした裁判例も複数存在します。
そうすると,裁判所としては目的の範囲をかなり緩く判断しているものと整理できます。
以上を前提として本件についてみると,各通信事業者と提携し,設備を提供することから,新規事業とも思えますが,あくまで自社物件で行う事業であり,他社に対して当該スキームを提供して収入を得るという営業を行うようなことは想定されておらず,また,設備の一本化により配線等が整理されることや,建物内での通信環境が改善し,利用者の利便性が高まるという側面を考えると,不動産の収益性を向上させるものであり,不動産管理に付随する事業と評価しても全くおかしくありません。
したがって,本件は目的の範囲内との評価がなされる可能性が相当程度ある事案といえます。
以上より,本件は必ずしも定款変更しなければ何かしらの問題が生じる状況とまではいえません。
他方で,通常「電気通信業」のような事業をするのであればそのように記載するのが一般的であり,本事業が完全に定款の目的の範囲内ですと言い切ることができるほどには定款の記載が明確ではないことから,何らかの形で争いが生じた際には目的の範囲外であるという認定がなされる可能性がゼロとまではいえません。
そうすると,リスク回避のためには電気通信事業を事業の目的に追加する定款変更を行った方が当たり障りのない対応といえます。
なお,定款で定める目的に「その他適法な一切の事業」と定めることは,会社法上可能であると解されており,そのような形で定款を改定することによってもリスクを回避することが可能だと考えます。
【Web相談即時予約】について
当事務所があらかじめ設定したご予約カレンダーの日時と、ご相談者様(企業のお客様に限ります)のご都合が合う場合には、お申し込みと同時に当該日時での Web 相談予約を完了していただけます。
紛争やトラブルのご相談だけでなく、法務に関する一般的なご質問への対応も可能ですので、ぜひお気軽にご予約ください。
※ご予約カレンダーに表示されない日時にWeb相談をご希望の場合は、
お問合せフォームからお申し込みください。