- 独占禁止法
卸先小売業者による他の小売事業者との取引の妨害
Q
当社は食料品の卸売販売をしており,取引地域にスーパーマーケットAが新規開店することから,Aに対して当社の食料品を取り扱っていただけるよう交渉をしていたところ,既存の卸売先であるスーパーマーケットBから,「スーパーマーケットAと取引をするなら,既存の取引は見直す」という通告を受けました。
Bとの取引がなくなると当社の経営には大きな影響があるため,Bに対してはあまり強く出られない状況なのですが,このような通告は不当ではないでしょうか。
A
Bによる通告は,貴社との取引ついて,競業他者との取引をしないことを条件として求めるものであり,いわゆる「排他条件付取引」とよばれるものであって,一定の要件にあてはまる場合には独禁法上違法とされています(一般指定11項)。
排他条件付取引の違法性の判断基準については,公正取引委員会が定める「流通・取引慣行に関する独禁法上の指針」が一般的な基準を示しており,「有力な事業者」がこのような取引を行うことにより「市場閉鎖効果」が生じる場合に違法となるものとされています。
「市場閉鎖効果」という用語はわかりづらいかもしれませんが,当該行為によって当該市場への新規参入者(本件における「スーパーマーケットA」)や既存競争者が排除されたり,取引の機会を不当に減少させられたりする状態のことを意味しています。
また,「有力な事業者」と評価される一応の目安は「当該市場のシェア20%以上」とされています。したがって,Bがその地域での市場シェア20%以上を誇るような強力な事業者で,Bの行為によってAが市場から排除されてしまいかねない状況にあるとすれば,本件のBの行為は独禁法上違法と評価される可能性があります。
また,貴社とBとの力関係においてBが優位に立っており,貴社がBの言うことに逆らえないような状況にあるのであれば,Bが貴社との取引条件を不当に引き下げたり,取引を打ち切ったりすることが「優越的地位の濫用」にあたるものとして独禁法上違法とされる可能性もあります(独禁法2条9項5号)。
「拘束条件付取引」は本件でいうところのAを守る観点からの規制であり,「優越的地位の濫用」は貴社を守る観点からの規制という位置づけになりますが,いずれにしても貴社がその違法性を主張することは可能です。Bとは直接交渉してもいいですが,公正取引委員会に被害申告をするということも考えてよいと思います。
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