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社員の組合専従者について

Q

Q1 会社の労働組合から,規模の拡大にともない,社員の中から組合専従者を数名出すことを認めて欲しいという申入がありました。これまで当社に専従者はいませんでした。しかし,当社の会社規模は大きいとは言えず,社員が数名抜けただけでも会社の戦力ダウンは必至です。当社は,組合のこの申入に応じる義務があるのでしょうか。
Q2 当社には,社員の60%をメンバーとする第一組合と,社員の20%をメンバーとする第二組合があり,第一組合には専従者5名を,第二組合は同じく2名を認める協約を締結しています。協約の有効期間は1年ですが,終了一か月前までに異議をいわないかぎり,自動更新されることになっており,これまで5回更新しています。
組合専従者はいつも暇そうで,陰では「労働貴族」と揶揄されていること,昨今会社の業況が悪いので,営業戦力アップのため,次年度から組合専従者を減らしてもらいたいと思います。
(Q2-1)当社は,次回更新の際に,現在の協約を更新せず,次年度協約においては,翌年以降の組合専従者を第一組合は2名減らして3名に,第二組合は1名減らして1名とする旨の申入れをしたいと考えています。このような申入れをすることは問題ないでしょうか。
(Q2-2)協議が成立しないときには,無協約状態になりますので,現在の専従者は皆社員に復帰すると理解してよろしいでしょうか。
(Q2-3)交渉の結果,第一組合は会社提案を了解し,その旨の協約を締結しましたが,その後,第二組合は全く応ぜずストライキまでちらつかせてきたので今年度は諦めて前年度と同じ協約を締結しました。
そうしたところ,第一組合が,減員協約は組合を差別するもので無効だと主張しています。
この組合が主張するとおり,第一組合と締結した専従者を2名とする新しい協約は無効となってしまうのでしょうか。

A

(A1)
専従者を認めるかどうかは,使用者の自由な判断にゆだねられています。組合専従は,労働組合と使用者間の合意に基づいてのみ認められ,労働組合からの要求を承諾するか否かは使用者の自由に属するものであり,これを認めないことも可能です。

(A2-1)
申入れを行うことは原則として可能と考えられます。
ただし,不当労働行為の一類型である「支配介入」(組合の結成・運営に対する支配または介入)には,長年の労使慣行・便宜供与の合理的理由のない中止も含まれるとされます。したがって,第一組合に5名,第二組合に2名の専従者を認めることが会社と労働組合の慣行となっているような場合は,専従者の人数削減について合理的な理由があるか,また,そのような人数削減が組合に対する嫌悪の感情等をもって行われるものではないか等,申入れが不当労働行為に該当しないよう留意する必要があります。

(A2-2)
協議不成立の場合であっても,直ちにこれまでの取扱いを終了することは,上記と同様,不当労働行為に該当すると判断される可能性があります。
したがって,本来の協約の効力終了日以降も,一時的に従前の取扱いを継続しつつ時限的に(たとえば3か月など期限を区切って)組合との再協議の時間を設けて専従者を減員する内容の労働協約を締結する努力を行い,会社が真摯に対話を行ってもなお協議が整わない場合に,それまでの取扱いを終了させることが望ましいです。

(A2-3)
双方と交渉の結果として異なる内容の労働協約が結ばれることはあり得ることであって,原則として,そのような協約は有効です。
ただし例外的に,交渉事項や条件の提示が特定の組合を弱体化する意図で行われたと言った特段の事情がある場合には,不利益取扱いや支配介入の不当労働行為が成立し得るとされるため,注意が必要です。

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