- 人事労務問題
有期雇用従業員の雇止めの留意点
Q
当社の店舗スタッフの中に,3カ月間にわたり病気欠勤中の有期雇用従業員がいます。当該スタッフからは,うつ病の診断書が提出されており,さらに3カ月程度は仕事を休むよう主治医から指示を受けているようです。当該スタッフからは,別の店舗から転勤してきた上司との折り合いが悪くなり,そのことが原因ではないかという話が出たこともあります。
当該スタッフは,1年の契約期間となっており,これまで2回の契約更新を行っています。2カ月後に契約期間満了,更新のタイミングとなりますが,当社としては,契約更新をお断りしたいと考えています。
雇用契約書上は,「本人の業績や会社の経営状況等に照らし,契約を更新をする場合がある。」という記載があります。当社では,以前より,顧問弁護士のアドバイスを受けて,正社員には責任の伴う業務や難易度の高い業務を分担し,有期雇用従業員との職務内容に差を設けることはできていると思っております。また,現場の管理職に対しては,独断で契約更新の期待を持たせるような発言をしないよう教育しています。このような場合,契約更新をしないことは可能でしょうか。また,その場合の留意点を教えてください。
A
1 まず,当該スタッフの病気が私傷病であるか業務上のものであるかによって,結論が分かれます。すなわち,業務起因性が認められ,労災にあたるような場合には,労働基準法19条1項の類推適用により,病気欠勤中の雇止めが認められないとされています。
現時点では,当該スタッフからはっきりと労災である旨の主張があるわけではなさそうであるため,まずは,本人や本人の主治医が,病気の発症原因についてどのように考えているかをよく確認する必要があると考えます。なお,主治医との直接の面談を求める場合は,本人の同意を要します。
2 上記1の確認を経て,あくまで従業員の私傷病であった場合(従業員から一旦話題に出たとして結論的に労災の主張立証まではされなかった場合を含む)を想定すると,以下のとおりとなります。
当該スタッフについては,まだ2回のみの更新となっており,無期労働契約への転換権は発生しておりません。
そのうえで,①過去に反復して更新されたことがある有期労働契約で,その雇止めが無期労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められるものであるか,又は,②従業員が有期労働契約の期間満了時に有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められるものである場合には,解雇権濫用法理が適用されるものとなっております。
今回のケースでは,正社員との職務内容や責任の範囲について差異があるということであり,個別に契約更新の期待を持たせるような言動が確認できないということであれば,雇止めは可能と考えられます。
3 有期雇用従業員を雇止めする場合,一定の条件を満たす従業員については,契約期間が満了する日の30日前までに雇止めの予告をしなければなりません。今回のケースでは,1年を超えて継続雇用している点で,予告の対象となりますので,ご注意ください。
また,従業員から,更新しない理由について証明書を請求された場合には,遅滞なく交付しなければならないとされておりますので,そのような請求があった際には,ご留意ください。
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