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支払遅滞を繰り返す賃借人に対する賃貸物件明渡請求
Q
当社は賃借人A社に対し複数の物件を店舗営業のために賃貸しているのですが,A社は賃料の支払が滞りがちで,1つの物件についてここ半年間は2か月分の賃料の延滞が続いています。
この物件については過去にも度々賃料の延滞があり,延滞金額は最大2か月分程度ですが,延滞しては完済するということが数年以上繰り返されている状況にあります。これまでの当社に対するA社の対応は極めて不誠実であり,できればA社とは縁を切りたいというのが本音です。
①この物件の契約を解除したいと思っているのですが,それは可能でしょうか。
②また,A社のことなので,解除を通知すると慌てて滞納分を支払ってくる可能性があると思っているのですが,そのような場合でも解除は有効でしょうか。
③実は,A社については,過去に5月分以上の賃料を滞納していた別の物件があり,この物件については既に契約を解除して明渡しを受けています。このときは,A社が事実を認めず色々理由を付けて抵抗したため,最終的には訴訟を提起して,2年以上の期間をかけ,当社勝訴の判決を得てようやく明渡しを受けることができました。このときにとても苦労したことがA社と縁を切りたいと当社が考える理由の一つでもあるのですが,このような事情は,今回の物件の契約を解除するにあたって,何か意味があるのでしょうか。
A
①賃料の不払いを理由に,賃貸借契約を解除することができる可能性はあります。ただし,賃料の不払いがあれば絶対に解除できるというわけではなく,裁判例では,「賃料の不払いにより賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊された」という段階に至ってはじめて解除を有効と認めるという考え方をしています(いわゆる「信頼関係破壊の法理」)。
今回のケースでは,滞納額自体は2か月分にとどまっており,裁判例に照らして「間違いなく解除が有効となる」とまではいえないのですが,滞納の期間は半年間とそれなりに長く,過去にも長期間にわたって延滞が繰り返されていたという事情もあるので,解除が認められる可能性はそれなりにあると思います。
②既に契約が解除された後に賃料の支払があったとしても,解除の効力への影響はありません。ただし,催告解除(いついつまでに賃料を支払わなければ契約を解除する,という方法)の場合に,期限までに賃料全額が支払われたというのであれば,解除の効力発生前に債務不履行が解消されている以上,解除は認められない可能性が高いと思います。ちなみに,その場合でも,いったん解除寸前まで話が進んだということは信頼関係の破壊を基礎づける事情の一つとなり,今後再度滞納がなされたときには,より解除が認められやすくなりますので,全く意味がないというわけではありません。
③そのような事情も,A社と貴社の信頼関係の破壊を基礎づける事情の一つとなります。最終的には事案ごとの裁判所の判断になりますが,今回の滞納の状況に加えて,過去に他の物件が賃料滞納を理由に解除されており,そのときのA社の対応も誠実なものでなかったという事情があるのであれば,今回の物件の契約解除も認められる可能性が高いのではないかと思います。
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