- 企業法務一般、顧問契約
有期労働契約の更新拒絶
Q
当社はパート社員Aとの期間1年のパート契約を10回ほど繰り返し更新してきました。今回もAからは契約更新の申入れがありましたが,当社といたしましては,この3月で1年間の雇用契約が終わりますので,今回は契約を更新することなく期間満了を理由に終了させようと考えています。問題ないでしょうか。
A
問題があります。Aとの雇用契約を終了するためには,一般社員の解雇同様,更新しないことが客観的に合理的であり,かつ社会通念上相当であることが必要です(労働契約法19条)。
確かに雇用期間を一年に限定する労働契約については,終了時に契約を更新するかどうかは雇用者の自由であるのが原則です。
しかし,一定の場合に期間満了後の更新拒否を無効とするルールがあります(労働契約法19条)。
一つ目は,過去に反復更新した有期労働契約で,その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められる場合です(同条1号)。
二つ目は,労働者において,有期労働契約の期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められる場合です(同条2号)。
これらの場合には,契約期間が満了していても,直ちに契約を終了することはできません。
Aとの雇用契約を終了するためには,一般社員の解雇同様,更新しないことが客観的に合理的であり,かつ社会通念上相当であることが必要です。いずれかの要件が認められないときには,雇止め等は認められず,有期労働契約については,従前と同一の労働条件で契約が更新されることになります。
この場合において有期労働契約を更新せずに契約を終了させるためには,解雇の局面と同様に,かなり強い理由が必要です。例えば,職場の現金を横領したとか,職場からの再三の催促にもかかわらず,何の理由も説明することなく1か月間連続して無断欠勤を繰り返すといったレベルです。
協調性がない,労働能力が十分でないといったレベルの理由だと,解雇等労働契約を終えることは,そう簡単には認められていないのが実状です。
本件についてみると,有期労働契約であっても,10回も雇用契約を更新しているとなると,労働者側では雇用継続に対する期待がかなり強いでしょうし,にもかかわらず期間満了を理由に契約を更新しないとなると,それは,実質的に解雇と同視されてしまってもやむを得ないと考えます。
Aとの契約を終えることに合理的な理由があるのかどうか,また,契約を終えることが相当なのか否か,更新しないことを伝える前に,十分確認してください。
この点の判断にご不安があれば,あらかじめ弁護士にご相談いただいた方が無難だと思います。
なお,労働者保護の観点から,労働契約法18条は,有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは,労働者の申込みにより,期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できると規定しています。本件のAの契約期間は通算5年を超えており,Aからこの転換の申込があると,会社とAとの間の契約は「期間の定めのない労働契約」に変換されることになりますので,上記の雇止めの有効性の問題とは別に,この点についてもご留意下さい。
【Web相談即時予約】について
当事務所があらかじめ設定したご予約カレンダーの日時と、ご相談者様(企業のお客様に限ります)のご都合が合う場合には、お申し込みと同時に当該日時での Web 相談予約を完了していただけます。
紛争やトラブルのご相談だけでなく、法務に関する一般的なご質問への対応も可能ですので、ぜひお気軽にご予約ください。
※ご予約カレンダーに表示されない日時にWeb相談をご希望の場合は、
お問合せフォームからお申し込みください。