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北海道知事による要請・指示を受けた商業施設の休業について

Q

当社は,現在,北海道知事の緊急事態宣言や蔓延防止措置を受け,所有する商業施設を臨時に全面休業しております。 当社が休業期間中の賃料をテナントに請求することはできるのでしょうか。
共益費はどうでしょうか。

A

休業時の賃料の取扱をどうするべきかについては,まずは賃貸借契約の定めに従って判断することになります。新型コロナウィルス感染拡大の影響が出る前に締結された賃貸借契約においては,本件のような事態に対応する規定がないことの方が多いかもしれませんが,契約上,行政からの要請による施設の休業の際の賃料の取扱に関する定めがなされている場合には,基本的にその定めに従った対応をすべきです。

他方,本件のような事態に対応する規定がない場合には,民法等の法令に従って判断することになります。
この点,民法によれば,賃貸人が賃借人にテナントを全く使用収益させることができていない場合には,その原因が専らテナントの側にある場合を除いて,賃貸人がテナントに賃料を支払わせることはできません。賃貸人・賃借人双方に原因がない場合には,危険負担の原則(民法536条1項)により,テナントは賃貸人からの賃料請求を拒むことができることになりますし,賃貸人側に原因がある場合には,単なる賃貸人の債務不履行となり,いずれにしても自分の責任によらず建物を全く使用できていない立場にあるテナントに賃料の負担を負わせることはできません。休業要請によって施設全体が休業する場合,少なくともテナント側に責任があるとはいえないでしょうから,テナントが全く使用収益できていないのであれば,賃料を支払ってもらうことは難しいということになります。

しかしながら,施設が全面休業しているからといって,それをもってテナントの使用収益が全くできていないと評価してよいか,という問題は別にあり得るところです。
施設の全面休業となればテナントの営業活動は全くできないということになりますが,テナントが建物の占有そのものを失うというわけではなく,テナントスペースにおいて什器備品や商品を保管することは変わらずにできますし,従業員の出入りや接客を伴わない業務は許容されている場合もあり得ます。このような場合であれば,必ずしも使用収益の全部が不能となっているわけではないという評価もあり得るところであり,テナントの使用を一部制限している分賃料は減額されることになりますが,賃料請求自体は許される可能性もあると考えられます(民法611条1項)。

また,共益費については,必ずしもテナントの使用収益の対価としてではなく,商業施設の維持管理のための費用という性質であると評価できる場合も多く,全面休業措置をとった場合でも賃貸人側において施設の維持管理のための費用を要することに変わりはありませんので,やはり賃借人に請求できる余地があるものと思われます。同様の考えを示す裁判例もあり,たとえば,神戸地判平成14年2月26日判決は,「共益費はビル全体の管理の費用であり,使用収益債務の対価ではなく,共用部分の維持管理等のための必要経費である場合があり,その場合には,臨時休館によって建物を使用することができなくなった場合でも,なお請求を認める余地があると思われる。」と説明しています。

なお,賃貸人が賃料を減額した場合,一定の要件の下,減額した分が損金算入されることが可能となっており,賃料が得られなかった場合でも一定の救済を受ける余地があります(国税庁FAQ新型コロナウイルス感染症に関連する税務上の取扱い関係5の問4参照)。

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