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入社後に障害を持っていることが発覚した場合の取り扱い

Q

入社後に従業員が業務に支障が生じる程度の障害を持っていることが発覚したのですが,このような場合の取り扱いについて考慮が必要な法令や参考となる裁判例などはありますか。

A

(1)障害者雇用促進法は,「事業主は,障害者である労働者について,障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となつている事情を改善するため,その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備,援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし,事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは,この限りでない」(第36条の3)と定めています。

ここで,「過重な負担」には,①「均衡を失した負担」と,②「過度の負担」とがあると説明されています。

①「均衡を失した負担」とは,合理的配慮に基づく措置のコスト(金銭のみでなく人的・組織的ないし業務的な対応の困難等も含む。)が,当該障害者の能力発揮や均等な機会・待遇確保というベネフィットより大きい(比例しない)場合が当たります。具体例としては,応募者の採用面接のためだけにエレベーターを新規に設置するようなケースがあります。

②「過度の負担」とは,個々の措置として均衡性は存するものの,当該企業の企業規模や財政状況等の全体的な事情に照らして,過重な負担と判断されるケースが当たります。具体例としては,障害者が軽易業務のポストへの配転を希望したが,事業主の企業規模が小さく,そのポストを準備できない場合があります。

(2)裁判例では,小学校の歯科巡回指導を行う歯科衛生士として雇用された人物が頸椎症性脊髄症に罹患し,歯科衛生士が行う歯科巡回指導の中心的かつ不可欠の要素である歯口清掃検査を行うことができなくなったという例で,「身体の故障により業務に耐えられないとき」に当たり,普通解雇を有効としたものがあります(東京高等裁判所平成17年1月19日判決)。

同判決では,解雇の可否の判断に当たり,身体の状況の確認,通勤の可能性,就労環境の整備および負担軽減の方策(職場の改善,補助器具の利用等)について検討すべきであったとする労働者側の主張に対して,「就労環境の整備や負担軽減の方策は,障害者の社会参加の要請という観点を考慮しても,また,将来的検討課題として取り上げるのが望ましいことではあるにしても,本件においては,社会通念上使用者の障害者への配慮義務を超えた人的負担ないし経済的負担を求めるものと評せざるを得ない」との判示がなされており,裁判所も「過重な負担」か否かを判断の要素としているところです。

(3)他方で,大型特殊自動車(重機)の運転業務に従事する従業員が,左眼の視力が0.03(矯正不能)という視力障害を持っていることを申告せずに採用されたことについて,当該視力障害は,総合的な健康状態の善し悪しには直接には関係せず,また持病とも直ちにはいい難いものであり,視力障害から直ちに大型特殊免許を有する当該従業員を重機の運転業務に従事させることが危険であるとまでは認められず,懲戒解雇事由及び普通解雇事由に該当するということまではできないとして,解雇を無効とした例(札幌高等裁判所平成平成18年5月11日判決)もあります。
このように,当該従業員に生じた症状が担当業務の性質(障害があっても支障が生じない業務を担当させることの困難性)や,担当業務を不可能とするほどの症状であるかが問題となりますので,この点の客観的な資料(医師の診断書や意見書等)を収集し,今後の症状の推移も確認されるようにしてください。

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